日々草の唄

死ぬまで生きる日々のようす

『ジャン・ジュネ詩集』

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おまえの頬打つペニスをやわらかく咬み
膨張したわたしのペニスに接吻してくれ
一息に呑みこまれたわたしのペニスの嚢(ふくろ)を
おまえの頸(くび)にたたきこんでくれ
愛欲でおまえを絞め殺すのだ 反吐を吐き仏頂面をしろ!
                   「死刑囚」 

白痴のような錯乱によってわたしは見る おまえの純粋な分身を!
                     「死刑囚」

光あふれる美しい夜
ピロルジュの闇夜
            「葬送行進曲」ーⅣの冒頭 

わたしたちはおまえが狂気に運ばれて
髪に鉄の王冠をひっかけ
真珠のよだれと穢れた薔薇のなかへ
生捕りにされて腕をひねられてあらわれるのを見た
            「葬送行進曲」ーⅨ 


おまえを捕まえるために 天は残忍で新しい
死とともに作動する至高の罠をつくった
死神は見えない台座の高みから 金色の糸巻きのうえ
網と結び目を注意深く見守っていた

天はまた蜜蜂の直線コースを用い
長い光の矢と糸をたぐり
遂にはこの素晴らしい薔薇をとりこにした
横顔を見せる少年の顔を
            「葬送行進曲」ーⅨ


絶望の歌が恐怖を抱きしめ おまえの美しい眼をえぐりながら
夢中になっておまえを見ようとした
そしてこの歌は千年ものあいだおまえの柩を震わせた
               「葬送行進曲」ーⅨ 


死の黒い喪章がひかっている

心臓を刺し血にそまる接吻(くちづけ)の花で
飾りたてるのだ
            「ラ・パラード」


かれの瞳は アザミや黒イバラ
            「シュケの漁夫」

さらば 天の王妃よ さらば手のひらから
切り抜かれたわたしの皮膚の花よ
おお 幻想のつきまとうわたしの沈黙よ
            「シュケの漁夫」

わたしの手にかかって死ね わたしの瞳にみとられて息絶えよ
                    「シュケの漁夫」


夜が着物を脱ぐところ 夜が花づくりをするところ
屠殺(とさつ)者のまぎれもない拳が 俺の薔薇を抱きとめた
おお 俺の泪にぬれていたあの少年の夜よ
少年のペニスを包みこむ一つの詩を編め
             「シュケの漁夫」ー泥棒

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・ジュネは現実の外に生き、自己の精神のなかに美の王宮を築き、
 生と死とを交錯する一瞬に生き、瞬間のパラドックスを自ら
 演じのけたのだ。
・われわれの社会での背徳はジュネの描く小宇宙では美徳に変り、
 現世の栄誉は堕落でしかないのだ。
・落下は上昇であり、醜や悪は究極においては美と合体される。
 「嫌らしいことの嫌らしさから遁(のが)れる
  唯一の手段は、嫌らしさにみをまかすことである。」
                (花のノートルダム
・運命の賭(jeu de l'oie)
 双六の一種。九つの仕切りのなかに、九つの鷲鳥の絵を描いた
 厚紙の盤の上に、二つの骰子を投げて勝負する種の賭博遊戯。
シレーヌ(Sirenes)
 海の女神。上半身は女で,下半身は鳥の形をした,人を魅惑
 する歌い手の海の怪物。
 風を治める力と,死者を冥府へ送る役目をもっているとされ,
 墓石の上にしばしば姿が見られる。
 個展時代以後次第に美化され,冥府の女神となり,幸福の島の
 音楽家にもなり,ミューズと同じく音楽の代表者となる。
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彼の情熱に圧倒されて終わりました。まぁ、死刑にされた好きな人にむけて書いてるものですし。
 
情熱的なだけに、すごく愛が伝わってくる…溢れ出てる詩だよなぁと思いました。
「瞳はアザミや黒イバラ」なんて、なかなかないよ。すごいよ。
もう意味分かんないけど、めっちゃ気持ち分かりますよね★

あと、「反吐を吐き仏頂面をしろ!」てのも気に入ってます。
語呂合わせがね★