日々草の唄

死ぬまで生きる日々のようす

水木しげる『錬金術』/三島由紀夫『金閣寺』/山口椿『死体の博物誌』

印象に残った文章メモ★

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この世の中にこれは価値だと声を大にして
叫ぶに値することがあるかね
すべてまやかしじゃないか
          『錬金術水木しげる

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私の心の暗黒が,この無数の灯を包む夜の暗黒と等しくなりますように!
                       『金閣寺三島由紀夫               
私は虚無とさえ,連帯感を持っていなかった。
                   『金閣寺三島由紀夫

私は死者をしか人間として愛することができないのかと疑われた。
それにしても死者たちは生者に比べて,なんと愛され易い姿をしていることか!
                   『金閣寺』(P196) 三島由紀夫

悪を行うときの彼は,彼自ら意識せずして,性格の芯が抜きでたような。
もっとも純潔な表情をしていた。それを知っているのは私ばかりであった。
                    『金閣寺』(P224) 三島由紀夫

認識だけが,世界を不変のまま,そのままの状態で,変貌させるんだ。
                     『金閣寺』(P230)三島由紀夫

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まぁ天下の子女諸君,お気をつけあそばせ,
ほっそりしてるからって,べつだん,美女に見えるわけでもない。
マリー・ベルだって,M・モンローだって,ふっくらしてたの。
まぁね,鏡とご相談の有上,ダイエットしてください。
                    『死体の博物誌』山口椿

想像してみたまえ,
あなたがやっとの思いで巣にしているマイホームやスイートホームを,
鋼鉄のキャタピラが,一瞬のうちに瓦礫に変えてしまう図を。
                    『死体の博物誌』山口椿

心ハ物ニツキテ起コル,仮リニモ不善ノタワムレヲ為スベカラズ。
                    『死体の博物誌』(P217) 山口椿

愛,なんて実体のない虚妄を言わないで頂きたい。
あなたは薔薇色の処女膜を眺めると,聖戦意識の昂揚に駆られる。
こういう子宮にこそ,おれの精子は育つべきだ,みんなでつなげよう人類の輪!
と叫ぶにきまっている。
                    『死体の博物誌』(P219) 山口椿

だからユリウス・メイビウスは叫んだ。
「われわれは,みんなくるっている!。」
そうとも,あなたもぼくもみんなくるっている。かわいそうにねぇ。
だからくだらない争いはなるべく避けるようにしよう。
                    『死体の博物誌』山口椿

人はみなその内奥に,どす黒く奇怪な暗闇を持ち続ける。
だからボードレールは,絶えず汝を酔わしめてあれ,と言い,
耐えがたい愚行をやるよりは,ドラッグの方がはるかにましだぜ,と書いた。
                    『死体の博物誌』(P221) 山口椿

死ぬと全身の筋肉は弛緩する。
麻薬をかけると同じようになるから,堕胎直後などは,
死人と同じ顔をしており,百年の恋も冷める。
                    『死体の博物誌』(P136) 山口椿

さて,一命をとりとめ,改心したあげく,
世のため人のため,ぼくが何をつくしたかとなると,
何とまぁ,そんな高尚なことには至らず,愚行と蛮行をくりかえし,
まぁ,地球のだいじな空気を減らしただけにとどまる。
まことに申し訳ない。
そんなわけだから,自殺したい輩は,こっそり,うまくなさることだ。
安っぽいヒューマニズムはごめんだ。
ショーペンハウエルのような賢人もいるが,一世紀にひとりぐらいだろうから,
残りのバカどもは,死にたけりゃ,どうぞ。
                    『死体の博物誌』(P213) 山口椿

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三島由紀夫の文章は好きな人と嫌いな人が大きく分かれる気がしますが、自分は好きな派です。
描写とその選ばれた言葉が正確だよなぁと思います。

そして、水木しげる山口椿の文章(せりふ)は救われるものを感じます。

とくに椿さんの描くエッセイ的な文章は、語り口調のような感じでユーモアがたっぷり!!
そして、そのユーモラスな中に、毒の華があります。
すごく好きです★